僕の「従軍慰安婦は必要だった」発言が、えらい批判を浴びたもんだな。侵略戦争の正当化だの、女性への人権侵害だのと、みんなで話を大きく歪めやがって。
 あれ以降あちこちで釈明してるように、僕はそういう意味で言ったんじゃない。戦争や慰安婦制度を容認する気なんて毛頭ないし、そんなもの自体なくすべきなのは当たり前だ。だいいち、戦争さえなければ慰安婦だって要らないんだから。
 ただ、その辺は大前提として、現に当時の兵隊さんたちは恋人や奥さんから引き離され、戦地という異常な世界に心ならずも放り込まれた訳ですよ。僕が表現したとおり、「銃弾が雨嵐のごとく飛び交う中で……」だ。そういう、極限状態に置かれた男たちの性的なエネルギーを、実際問題どうすれば発散できたかって話なのに、女性の尊厳だ何だって、まったくピントが外れた議論だろう。
 そんな状況の中でも自分の性欲をコントロールできる男だっている、って? それはそういう数少ない「できる男」が特別に偉いんであって、大半の「できない男」を悪者に仕立てて済むようなことじゃない。例えば、すごく恵まれない環境においても立派に育つ人はいる。その場合、そういう「稀な人」こそが褒められるべきで、ドロップアウトした「その他大勢」を安易に責めても仕方がないでしょう。現実的な傾向として、生育環境の悪さと犯罪率の高さは間違いなく比例するもんなんだから。それを「すべての男を性欲の塊みたいにいうのは、節度ある男性に対して失礼だ」なんて良識一辺倒なこと言われても、ちょっと反応のしようがないよな。
 そもそも、僕の発言を叩いた面々の中には、内心じゃ僕に賛同するどころかもっとドギツイこと思ってる連中もいっぱいいるはずだ。そいつらは、僕の意見にモノ申すというより、世間やアメリカの追及が怖くて僕を突き放してるだけだろう。今さらながら、ホントに卑怯な奴らだよ!

 いや、わかるよ、わかる。皆さんの言ってることもよく分かります。たとえちゃんと考えたうえでの発言だとしても、僕の口から出たら何でも薄っぺらに響くってことだろ? それは無理もないんだよ。だって、僕自身がそういう人間だから。
 僕の党の共同代表も「軍と売春は付きもの」なんて相変わらずなノリで僕を擁護してくれてるけど、やっぱり僕みたいな人間にはそれなりの人物が「付きもの」なんだ。いつだって、人は自分とレベルの近い誰かに惹き寄せられるもんだからね。

 「在日米軍は風俗業活用を」発言にしたって、国際感覚の欠如については軽率だったと認めるけど、風俗業自体は日本の法律で認められてるんだから、何の問題もないだろう。なんせ、僕の唯一の拠りどころは、「人倫」でも「理念」でもなく「法律」なんだ。いわば僕にとって“法こそが神”ってことです。
 そもそも、性という領域において男女の身体の構造が違いすぎるから話がややこしくなるんだよ。大雑把にいえば、「好きな男にしか性欲を感じない」女性に対して、「どんな女にも性欲を感じる」男性。世の中こんな取り合わせの二種類が共存してるんだから、そりゃあしょっちゅうトラブルが起こるに決まってるよな。まぁ強いて言うなら、“責任は創造主たる神にあり”ってやつですよ。
 そうそう、いま立て続けに「神」って言葉を使ったけど、それは飽くまでモノの喩えというか便宜的な話で、僕は神の存在なんて信じないよ。あれは、何か強いものに縋りたいっていう人間の弱い心が無理やり造った幻想だし、まだ幽霊なんかの方が存在する可能性はあると思う。だって、実際にこの世で生きてた人間が死んだあと、肉体は消えても魂みたいなものが残ることは考えられるだろう。でも、神なんてものは最初から実在した例(ためし)がないんだからな。だいたい、本当に神がいるなら、こんなしょーもない世の中になってるはずがないし、何よりも、僕みたいな人間の戯言がこれほど注目されるワケないでしょう?

 しかし、今回の僕にしてもそうだけど、調子に乗ってる人間ってのは誰に唆(そそのか)されるまでもなく、いかにも魅入られたように余計なこと仕出かして自滅するもんだ。戒めのためのオウンゴール……やっぱり、「神さま」はちゃんと見てるってことだね。あれ、さっきと言ってることが違うって? いや、僕の言葉に矛盾があるのは当然だよ、なんせ僕自身がそういう人間だし。
 でもまぁ、これからほんの少しの間だけ大人しくしてれば、僕の「妄言」のことなんかみんなキレイに忘れてくれるだろう。そしたら僕の天下は必ずまたやって来る、そう楽観してますよ。理由? だって、ここはそういう国なんだから。


'13.春  東雲 晨





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